「特集」サンタクロースの実態

サンタクロース。世界の子どもたちに夢を与える人たちの実態に迫ります。


例年にも増して今年のクリスマスはコロナ禍による一人あたりの配送力の低下と高齢化の進むサンタクロースに代わり、クライアントへプレゼントを送達するという代行ビジネスが活況です。

それは欲しい物のヒアリングから始まり、商品の選定から在庫の確認、商品の購入にかかるまでの費用をすべて下請け代行が負担するという、まさにサンタ側にとって極めて有利かつワンストップで完結できるという構造です。

元請け側のサンタが用意するものは「白髭を蓄えた優しい笑顔の大袋を抱えた中高年男性」というイメージだけ。コンサル、決済、配送までの全ては下請けに担わせており、すがすがしいまでの丸投げの実態が見えています。

無慈悲なまでに厳しく設定された納期は、クライアントの就寝後から起床までの間という非常にシビアなスケジュールを強いられており、業務環境としては大変厳しいものです。またクライアントからのクレームについても「これじゃない!」「待ってたのに来なかった!」や、「プレゼントが高額過ぎるではないか」などというクライアントの親(両親のどちらかが事業に関わる率が多い)からのものなど多岐にわたります。しかしこのような問題に関して元請けのサンタクロース側は一切関与せず、すべては下請け業者の問題という構造になっています。

ここまでシビアな要求をクライアント側から受けながら、サンタクロースの役務代行しているにも関わらず、その経費が支払われないというトラブルは毎年12月ごろに集中して世界中で発生しており、我々特命取材班が調べてみたところ、サンタへの請求先が不明確で、連絡すら取れないという事実が判明しました。

なぜそんな詐欺のようなビジネスが長年にわたり放置されているのか実態を掴むべく、実際にサンタクロース代行業に携わるAさんに話を聞きました。

Aさんは38歳。奥さんとの間に7歳の子供が1人。この代行業は自分の子供が物心ついた頃に始めたといいます。「費用が支払われないという事実はあるか?」と短刀直入に聞いたところ、「ある」と答え、続けて「子供の笑顔が見れればそれでいい」と話しました。

実体のないサンタクロースを語るこのようなビジネスは他にも複数存在し、サンタクロースの現在地を追跡できるというサンタトラッカーや、サンタさんにお手紙を書くと返事が来る、などというサービスまであります。

私たちの取り巻く現実世界はあまりにも悲しく、そして汚い。そんな現実世界に存在する「夢」のひとつがサンタクロース。

Aさんがサンタクロース代行業について笑顔で語る時、その目はどこか遠くの「夢」を見ているようでした。

メリークリスマス。すてきな夜を。